川崎市総合都市交通計画の中間とりまとめ(骨子案)に意見提出を!

先週開催の当会定例会では、川崎の交通とまちづくりを考える会(K-cube)さんと共催で、「川崎市総合都市交通計画」骨子案に関する意見交換会を行いました。

また、市が主催する説明会が、今月初旬に3回開催されました。

この「川崎市総合都市交通計画」は、今回初めて策定されようとしているものです。市の説明会で、担当部署の室長は、「交通は市民生活や社会経済の発展などを支える上でとても大切。これまでもバリアフリー化などの施策を講じてきたが、一方で、急速に進行する高齢化、国際的な地球温暖化防止、さらに東日本大震災を経験した。交通政策においても、将来を見据え、様々な課題に対応していくことが重要」だとして、「鉄道などの公共交通ネットワークのあり方や、地域における市民の身近な交通がどうあるべきかを含め、将来を考えながら交通政策、目指すべき交通体系のマスタープランとして、川崎市総合交通計画を策定する」のだと説明していました。

この骨子案、PDFで32ページあります。まずはダウンロードして開いてください。

川崎市総合都市交通計画(骨子案) 1~7 (PDF 3117KB)
 http://www.city.kawasaki.jp/50/50kousei/home/plan/tyuukan.pdf

川崎市総合都市交通計画(骨子案) 8~10 (PDF 2690KB)
 http://www.city.kawasaki.jp/50/50kousei/home/plan/tyuukan2.pdf

6ページに「交通政策の理念」が掲げられています。まずはこの3つの理念を確認しておいてください。

7~17ページは、川崎市の交通が今どうなっているか、現状認識の参考資料です。

18ページに、市が認識している交通の課題が示されています。

19~26ページは、鉄道、道路、その他(地域交通)に分けて、市が取り組もうとしている事が示されています。

27ページ以降に「重点施策」があり、市が特に力を入れるとしている施策が、5分類で示されています。

このように、川崎市がこれから20年かけて取り組もうとしている事が示されています。この計画は、今回の意見募集を受けて7月末より検討委員会が再開され、2012年度内に最終案が作られる予定です。皆さんの意見が最終計画案に反映される時間がまだ残っています。

私たちは、毎日の生活に欠かせない地域交通を、20年後、さらにはエネルギー価格が高騰し、子どもや孫たちが大人になる50年後につなげるために、どうしていくべきなのか?

理念に照らして、この骨子案に掲げられている具体策は妥当なのか?
具体的に書き加え、または変えるべきことがあればそれも指摘しましょう。

他にも、今の交通政策で困っている所はどこか、そもそも理念や前提条件は妥当なのか…?といった視点もあるでしょう。

私たちの毎日の生活に欠かせない交通を今後どうしていくのか。その大事な計画を決めるに当たり、皆さんの意見を求めています。この意見募集は、17日24時締切。皆さんに、いろんな視点からチェックしていただき、一人一人の意見を提出してください。

メール⇒ 50kousei◎city.kawasaki.jp (◎を@に変えてください)
FAX ⇒ 044-200-3967
郵便 ⇒ 〒210-8577 川崎市役所まちづくり局交通政策室

意見書の参考様式(様式は任意です) PDF / MS-Word

#市外の方も意見を提出できるようです。川崎市にはこうなってほしい、
 この方向でがんばってほしい等、応援メッセージをよろしくお願いします。

当会ではこの計画策定の検討委員会を毎回傍聴する、勉強会をこれまで2回開催するなど、取り組んできましたが、もちろん引き続き議論を注視してゆきたいと思っています。私たちの会へのご参加・ご支援も、よろしくお願いします。

日本の街の良さを見直す年に―『世界が賞賛した日本の町の秘密』

持続可能な地域交通を考える会(SLTc) 代表の井坂です。
旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

#この記事は、本会関係の皆様へメールでお送りしたご案内を、新年のご挨拶にかえて掲載します。

昨年は3月の震災に直面し、価値観や優先順位が大きく変化した年になったという話を聞きます。数百年に一度の甚大な津波被害、さらに原発による人災の爪痕が大変深刻で、今なお被災地の復旧・復興を大きく妨げるとともに、従来のエネルギー政策が破綻し、旧世紀の政策の立て直しが求められています。

地域交通の分野では、とりわけ自転車の利用に関心が集まりました。元々健康や環境にやさしく手軽で便利な交通手段として人気がありますし、世界の都市では道路交通が抱える諸問題を解決する切り札として注目されています。
ところが、日本では自転車が持つ良さを日々受益してきた割りに、政策的に軽視されてきました。毎日利用している大人や、交通法規を習得した証である運転免許証を持つ人、道路・交通管理者である行政職員ですら自転車の正しい乗り方をあまり意識せず、「自転車は歩道」という誤解が蔓延した結果、歩行者の安全を脅かす問題が生じています。
昨年10月に警察庁が通達を出し、自転車が車両であり車道を走るという原則を改めて確認しましたが、クルマ優先思想が根深い一部関係者からの問題発言が相次いだ一方、自転車利用者からも、車道では自動車の速度違反や違法駐車といった違法行為が常態化しており、道路構造もクルマ優先思想で造られているなど、自転車が安心して走れる状況にないと言う問題提起が起きています。

この自転車にまつわる諸問題は、日本の交通・環境政策の問題点の縮図であり、破綻が明らかになったエネルギー政策と同様、クルマ優先思想で進んできた20世紀型の政策の限界が、震災をきっかけに表面化したのだと思えます。

そんなこんなで自転車に注目が集まっている12月に、この本が発売されました。

洋泉社新書y『世界が賞賛した日本の町の秘密』 チェスター・リーブス 著、服部圭郎 訳  ISBN 978-4-86248-794-0


■洋泉社新書y『世界が賞賛した日本の町の秘密』
 チェスター・リーブス 著、服部圭郎 訳
 ISBN 978-4-86248-794-0
(参考)翻訳を担当した服部圭郎氏のブログ
http://urban-diary.blog.so-net.ne.jp/2011-12-07

欧州の最新交通政策は国内でもよく紹介されますが、日本の街の良さを見つめた本は、これまで類書がほとんど無かったのではと思います。

自転車だけでも、鉄道やバスだけでもダメで、これらの交通手段+狭い路地や商店街などが揃って初めて、人と環境にやさしい生活が実現します。さらに日本では都市間高速鉄道や郊外鉄道・バス路線も比較的充実しています(危機に直面していますが)。欧州の環境先進都市と呼ばれる所でも、公共交通でほぼあらゆる所へダイヤ通りに移動できるような地域は極めて珍しいと言います。

本書は、日本には主に平坦な都市部で築き上げてきた、人と環境にやさしい街が現存していることを一つ一つ紹介しながら、私たちの何気ない生活が、実は世界でも最先端の環境都市を実現しているのだと教えてくれます。

しかしその良さに気づいていない私たちは、せっかくの「自転車町内」を壊してしまいかねないような交通政策や再開発を繰り返してきました。都市計画による道路の拡幅や家庭の庭の減少、過大な駐車場附置義務や青空駐車場の増加などが、拍車をかけています。

著者は米国ニューヨークに生まれ、都市文化史が専門で、日本の大学で客員教授を務めていた頃には川崎区に住み川崎駅まで自転車で出て通勤していた経験もあるようで、身近な事例を写真入りで紹介し、私たちの何気ない生活が持つ良さについて、新たな視座を与えてくれます。

こうした身近にある良さを、私たちは見落としてきたのではないでしょうか。目新しい技術や再開発ばかりに目を向けるのではなく、身近にある当たり前な存在の良さを改めて見直し、良い所を残し発展させることが、地域コミュニティの再生にもつながり、震災後の私たちに求められているのではないでしょうか。

そして、新書で読みやすいのも本書の魅力です。専門家が書いた学術的な本は専門分野で取り組む人には価値が高い半面、一般には取っ付きづらい面が出てしまいます。一方で本書は、細かく見ると少々誤解や主観的な表現があるかもしれませんが、予備知識が無くても読みやすく、ほんの数時間もあれば読めてしまう分量です。このような本を多くの皆さんに勧めて読んでもらうことで、地域を良くするきっかけになるのではと思います。関心が高く活動的な住民が多い地域から、良くなってゆきます。関心を持つ人が増えることで、地域を良くすることにつながります。

本書は、先月は地元書店の新書売場に平積みされていたので、多くの方の目に留まったのではと思います。こうした本が出ることで、私たちが普段何気なく使ってきた自転車の良さに気づき、一方で何気なく信じ込んでいた「常識」の問題に気づくことで、地域の良さを伸ばすことにつながるのではと思います。

年が明けて早1週間、かく言う私も年明け早々バタバタしてしまい、ご案内が遅くなってしまったのですが、皆さんご多用の所と存じます。本書は通勤通学の電車内や、ちょっとした待ち時間などで手軽に読めるのも魅力です。読み進めるうちに、普段何気なく生活している私たちのまちが、人と環境にやさしい世界最先端の都市に見えてくるかもしれません。

なお、交通政策については、皆さんには釈迦に説法かもしれませんが、富山市の交通政策について紹介した本が、やはり12月に交通新聞社新書より発売されています。まだ新刊なので、少し大きめの書店に行けば置いていると思います。「交通基本法」の制定も控える中、最新の交通政策に関心のある方はこちらもご覧になってみてください。

交通新聞社新書『富山から拡がる交通革命』


■交通新聞社新書『富山から拡がる交通革命』
 森口将之著
 ISBN 978-4-330-25811-9
http://shop.kotsu.co.jp/shopdetail/003000000039/order/

少しご紹介するつもりが、つい長くなってしまいました。末筆になりましたが、私たち持続可能な地域交通を考える会 (SLTc) では、今年も地域交通をより良くすることを通じ、人と環境にやさしいまちづくりに貢献してゆきたいと考えております。ただし主役はあくまで市民の皆さんであり、とりわけ本会の活動に自発的にご参加・ご協力いただける皆さんのお力にかかっています。今年もより一層のご参加・ご協力をいただき、より多くの方に関心を持っていただくことで、毎日の生活に欠かせない地域交通をより良くしてゆけたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

コメント欄について/中央リニア新幹線 環境影響評価説明会の開催について

まずはお詫びとご案内です。担当会員の多忙により更新が滞っていますが、随時更新予定なので、もうしばらくお待ちください。

また、これまでにも大量のSPAMコメントが入っていますが、このような迷惑行為への対処として、掲載後1週間以上経つ記事へのコメント欄を閉じさせていただきました。twitter・facebook経由のコメントは従来通り表示されますので、時間経過後はSNSを使ってコメントをお寄せいただくか、当会へ直接ご連絡ください。


中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価 概要と縦覧、説明会開催のお知らせ(JR東海)


もうひとつ、JR東海が事業主体となって実施される、中央リニア新\幹線の建設工事に関する環境影響評価の方法書縦覧と、説明会が行われるとの事で、ご案内します。川崎市では中原区、高津区、宮前区、多摩区、麻生区が対象になっています。他、神奈川県相模原市、東京都品川区、大田区、世田谷区、町田市などでも同様の説明会が行われるものと思われます。

川崎市内の会場については、下記の通りです。ご確認の上、ご関心のある方はお出かけください。

●川崎市国際交流センター(東急東横線・目黒線 元住吉駅 徒歩10分)
 10月16日(日)10:00~11:30、18日(火)19:00~20:30
●てくのかわさき(JR南武線 武蔵溝ノ口駅、東急田園都市線 溝の口駅 徒歩5分)
 10月20日(木)19:30~21:00、23日(日)10:00~11:30
●宮前市民館(東急田園都市線 宮前平駅 徒歩10分、または市バス・東急バス)
 10月15日(土) 9:45~11:15、24日(月)19:00~20:30
●多摩市民館(JR南武線 登戸駅 徒歩12分、小田急線 向ヶ丘遊園駅 徒歩7分)
 10月25日(火)19:00~20:30
●麻生市民館(小田急線 新百合ヶ丘駅 北口 徒歩3分)
 10月16日(日)19:00~20:30、10月27日(木)19:00~20:30

■中央新幹線(東京都・名古屋市間)計画段階環境配慮書(平成23年8月)
 中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価方法書(平成23年9月)
http://company.jr-central.co.jp/company/others/chuoshinkansen03.html

高津区市民活動見本市に出展します ~いつまでも安心して住み続けられるまちにするために~

今度の日曜日、6月26日 11~15時に、溝口駅前高津市民館(丸井11・12階)で開催される「高津区市民活動見本市2011」に出展します。(ホームページに掲載の告知

本会は11階CCかわさき交流コーナー」内に出展し、いつまでも安心して住み続けられる交通まちづくりに関する展示を行うとともに、震災被災地支援のためベルマークを集めます。当日はぜひ、お手元のベルマークをお持ちください。

■人とつながる、街とつながる

市民団体が主催して今年で5回目になる本イベントの全体テーマは「人とつながる、街とつながる」。今年に入ってからも災害などコミュニティの力が試される事態が相次いでいますが、このテーマが決められた震災前から、様々な課題に対応できるまちには人と街のつながりが欠かせないことが意識されていました。

街の課題は様々あり、もちろん防災などの非常時対応も重要ですが、他にも新旧住民の交流や、高齢化への対応、緑地・環境保全など、様々な課題があります。人と街のつながりが求められている今は、逆説的に言えば、地域のつながりが必ずしも充分でないという共通認識があると言えそうです。


■いつまでも安心して住み続けられる交通まちづくり
人と環境にやさしく誰もが安全・安心・快適で便利なまちを目指して取り組む本会では、今回、「いつまでも安心して住み続けられる交通まちづくり」をテーマに様々な展示を用意しています。

(11z0835qs.jpg)

安心して乗れる倒れにくい自転車(1月29日撮影)

まず、車椅子メーカー・カワムラサイクルさんの協力を得て、ご高齢の方でも安心して乗れる倒れにくい自転車(右写真)や、子ども2人乗せ自転車の実車展示を行います。写真のようにしっかり足がつき、荷物が乗り、ゆっくりですが安定して走れますので、少々体力が弱っても移送サービスに頼らず自力で移動していただける補助具です。他にも、三輪で倒れにくい子ども2人乗せ自転車もお目見え予定です。体力や家族構成に合わせていろんな選択肢があることを皆さんに感じていただけたら幸いです。ぜひ見に来てください。

自転車タクシーのイメージ (113KB)

自転車タクシーのイメージ
(撮影協力:自転車スイスイさん、
自転車タクシースマイルさん)

また、本会ではもうひとつ自転車タクシー」の提案をしています。これは左写真のように、運転手さんがいて任意の場所まで乗せてもらえるタクシーです。自転車なので開放感があり、ゆっくり走るので安全で、細い道にも入れて短距離でも気軽に乗ってもらえる特長があります。長距離のお客さんには、路線バスや自動車のタクシーに乗り換えてもらい、主に短距離や観光目的で活躍しているそうです。本会では今年度事業の柱として、川崎の交通とまちづくりを考える会(K-cube)さん、川崎市麻生区岡上にある和光大学小林ゼミの皆さんと共同で提案事業を実施しています。

そして3番目に、本会恒例の交通アンケートも実施します。今回は少し趣向を変え、自転車利用目的に関するアンケートをするそうです。このブログでも報告があったように、川崎市では総合交通計画の策定に向け検討されていますが、そこでの自転車の位置づけは「端末交通」だけなのだとか。
…これだけでいいの?と疑問に思った担当者が、市民の自転車利用の実態と、今後の利用意向を探るアンケートをする事にしたそうです。シールを貼るだけの簡単なアンケートですし、本会が今後、市の政策担当の方と意見交換や要望をする際に役立てられますので、ぜひご協力ください。

■誰でも気軽に参加できる被災地支援・ベルマーク集め
「すべての子どもに等しく、豊かな環境のなかで教育を受けさせたい」。そんな願いをこめて1960年に始まったベルマーク運動は、ボランティアの手で集められた点数が資金(ベルマーク預金)となり、学校の設備や教材を揃え、さらに国内外の子どもたちに援助の手を差し伸べています。

3月11日の東日本大震災を受け、このベルマーク財団が「緊急友愛援助」という活動を始めたそうです。これを受けて和光大学の小林猛久ゼミナールの皆さんが、この仕組みを活かして被災地を支援するためにベルマークを集めています

小林ゼミの皆さんとは前述の自転車タクシー提案事業でご一緒しているご縁から、今回のイベント出展にご参加いただくことになりました。毎日の生活で使っているいろんな商品のパッケージなどに付いているベルマークを切り取って集め、当日お持ちください。和光大学さんからベルマーク財団を通じて、震災被災地支援に役立てられます。

和光大学ベルマーク運営委員会からのご案内・活動趣意書 (PDF 323KB)


このように様々な展示を企画していますが、他にも MAKE the RULE 川崎 参加団体の皆さんで、エネルギーの需要と供給にまつわる展示を予定していますし、他の団体もステージ、体験型イベント、先着で景品がもらえるスタンプラリーや、地元産野菜がもらえるじゃんけん大会など、いろんな企画が用意されているようです。
6月26日(日) 11~15時高津市民館(溝口駅前、丸井11・12階)で開催される「高津区市民活動見本市2011」に、ぜひご来場ください。

「高津区市民活動見本市2011」に出展します

「自転車まちづくり」の課題~川崎市の人の動きを考える

NPOかわさき市民アカデミーさん主催の地域協働講座「自転車によるまちづくり」に参加しています。あいにく都合がつかず欠席することも多いのですが、先週は古倉宗治さんの「地球環境時代の自転車のスマートなまちづくり」を、そして今週は川崎市まちづくり局交通政策室で「総合都市交通計画」策定を担当されている藤原課長からの報告を、続けて聴講することができました。

■「地球環境時代の自転車のスマートなまちづくり」(6月11日)
978-4-7615-2491-3古倉宗治さんは自転車政策の第一人者で、国内外の自転車政策に大変お詳しく、川崎市内では溝口駅周辺の駐輪場問題を実地調査をされ、今では再開発ビル(丸井などが入居するノクティプラザ)の周辺に短時間無料駐輪機が設置されていたり、駅から遠い(または地下深い)駐輪場の料金が割安に設定されているなど先駆的な工夫がされていますが、こうした政策を提言された方でして、川崎市内の事情もよくご存じです。

先月25日に放送されたNHKクローズアップ現代「“ツーキニスト”が世界を変える」の取材にも協力されたそうで、また番組に出演された小林成基さんが理事長を務めるNPO自転車活用推進研究会にも参加されています。

そんな古倉さんの講義は今回が3回目で、過去2回で基礎的な話をしていただいているので、今回はそのおさらいをしながら、日本国内でよくある自転車政策の問題点を議論する場になりました。なお、詳しくは著書『成功する自転車まちづくり―政策と計画のポイント』(学芸出版社)にまとめられていますので、そちらをご覧ください。

今回は、日本の自転車政策の問題点について下記5点が指摘されました(文言は要約しています)。

クルマ信仰
「クルマ社会」を前提とした自転車政策になっており、クルマ利用を削減するような施策が打ち出されてこない。
自転車の可能性への偏見
自転車が自動車(乗用車)を代替できる可能性が大きいにもかかわらず、自転車利用の可能性を活かそうとしていない。
自転車の長所・短所への偏見
自転車の長所(健康、便利、環境、経済性など)に対する理解度が低い。逆に、自転車の問題点(「放置自転車」「マナー」「事故」など)については過大なマイナス評価がされている。
自転車の位置づけに対する偏見
自転車を独立した交通手段として位置づけようとしない。他の交通手段の付属物・付随物としてしか扱わない。
自転車の安全性に対する偏見
自転車は「歩道が安全」だと言う主観に基づいた話がされている。政府の方針「自転車安全利用五則」(自転車は車道が原則、歩道は例外)を無視し、自転車を歩道に誘導している。

各々関連しそうな話ですが、この中で特に強調されていたのは下記の点でした。

「放置自転車」や「マナー」が過度に強調される一方、自転車活用の利点(環境、健康、災害対応、経済性、時間節約などの効果)は過小評価されている。
○データ分析に基づく客観的な議論ができず、主観に基づく印象論で政策を語っている人が多い。
自転車の利点として、個人や企業は主に健康、経済性、時間短縮に関心を持っているが、行政は環境問題などを主に訴えるので、効果的なPRが出来ていない
自転車利用促進のための政策のはすが、中身を見ると駐輪問題やマナーなど悪い点が事細かに書き込まれているのに対し、伸ばすべき自転車の利点についての記述が少なく、読んだ人が自転車を増やそうと思えないような書き方になっている

川崎市ではそもそも自転車利用促進政策を持っていないのですが、それを置いても、上記のような問題点は私たちに当てはまるように思われます。

■川崎市総合都市交通計画(6月18日)

hitonougoki_s.jpg

『川崎市の人の動き』

今週は、川崎市が平成23年度までに策定を目指して検討中の「総合都市交通計画」を担当している、まちづくり局交通政策室の藤原担当課長が講師でした。自転車利用に限った話ではありませんが、川崎市の交通の特徴を、平成20年(最新)のパーソントリップ(PT)調査の結果を様々な角度から分析された結果が紹介されており、とても興味深く見ました。具体的には、

・人口動向
・首都圏における川崎市の移動特性(地域間のトリップ数とその増減率)
・川崎市内、市内外、通過の交通量と割合
・地域別代表交通手段分担率
・バス分担率
・代表交通手段における自転車の割合(国際比較)
・高齢者のトリップ数
・町丁別夜間人口密度
・町丁別高齢化率
・バス路線網と運行本数の状況図
・バス停までの高低差
・PT小ゾーン別自動車分担率、自転車分担率
・高齢者1人あたりのトリップ数
・区毎の自転車利用者数、駅周辺の駐輪台数と駐輪場容量
・自転車・バスによる主要駅へのアクセス状況(地域と数)

※トリップ数とは、人の移動についてサンプル調査し推計した合計件数です。人の移動の回数で計算します。例えば自宅から職場へ出かけ、帰りがけに買い物をして帰る場合、自宅―(1)→職場―(2)→店(買い物)―(3)→自宅、計3トリップと計算します。

などがありましたが、とても詳しい貴重な資料です。
なお、これらの資料は 川崎市総合都市交通計画検討委員会 第1回 配布資料に含まれており、左記ホームページで公開されています。また、この概要版のような資料『川崎市の人の動き 第5回パーソントリップ調査から』が、市内の区役所や図書館などの公共施設で配布されています。

■データに基づく議論が苦手?~進まない「自転車まちづくり」の背景

siyrou4-1_08l.png

自転車が交通手段分担率に占める割合の都市間国際比較



06siyrou4-1_12.png

川崎市の地域毎の自転車分担率

前回は古倉さんより、印象論(主観)ではなくデータに基づく客観評価が重要だと指摘されました。今回はこのように様々なデータが示されました。これを受けて、川崎市の自転車・交通政策をどうするか?聴講者の議論に1時間ほど取られました。

議論はとても活発で、様々な提案が出てきました。ところが、示されたデータに基づく話は少なく、具体的な要望や主観に基づく話が目立っていたようで。たとえば「放置自転車がひどい」「もっと取り締まるべき」「自転車を進入禁止にしてしまえ」「高齢者が困っている」「ここにバスを走らせてほしい」といった内容です。

各々、重要な視点だと思います。しかし、その背景にあるデータを踏まえた議論にならないのは残念ですし、そもそも自転車利用を推進していると思えない意見ばかりです。自転車の長所に対する理解度が低く、過大なマイナス評価をしている…前回の古倉さんの指摘がそのまま当てはまるような議論になってしまいました。奇しくも、日本で自転車利活用に前向きに取り組めない実情を見せつけられたようです。

そもそも、この議論は「自転車まちづくり」の講座を受講しに来た人たちのものです。これほどまでに、私たちの自転車に対する感覚はマイナス側に偏ってしまっているのでしょうか。

■毎日の生活に欠かせない交通について、日頃から議論する場を!
とはいえ、今回はとても貴重な議論の場になったと思います。先週は国内外の自転車政策とその傾向について師事を受け、今週は地元である川崎市の総合交通計画を検討する元になるデータを豊富に提供され、その上で様々な人から闊達な意見が出されました。

一方で、今回に限ったことではありませんが、市民参加の議論の席でよく見られる課題も見られました。たとえば、自説にこだわって時間配分を考えずに長々と話したり、同じ話を繰り返したり、関係の薄い身上話や体験談を始めたり、他の人の意見を遮ったりと、議論のマナー違反も散見されます。

これに対し行政や企業などでも、(今回の事ではありませんが)結論ありきの「説明」をする、議論の基礎になるデータを出し渋るといった場面に出くわすことがあります。これでは不満のガス抜きやアリバイづくりにしかなりません。

このような議論の問題点については、私自身も本稿を書いていて耳が痛い思いですが(笑)、多くの議論の席に参加し、実際に意見をぶつけ合う中で、学んでいく事だと思います。市民の側も、行政などの側も、普段から本音の議論ができる場をもっと多く取ることで、相互理解にもつながりますし、各論を整理し磨きをかける機会にもなります。政策をより良くし、民主主義や地方主権などの基礎にもなる、大切な事ではないでしょうか。

こうした勉強会や議論など市民参加の場を設けることは私たち市民団体にも出来ますし、実際に開催されていますので、そうした議論の場に皆さんぜひ何度もお出かけになってください。一方、行政の皆さんには、議論の基礎となる資料の提供・充実や、市民主催の議論の場への参加・協力、また市民からの意見・提案を検討委員会などの場に提示して市民意見を反映させる努力をしていただきたいと思います。市民と行政がこのように力を合わせることで、より良い地域交通体系を実現できると思います。

■「川崎市総合都市交通計画」検討に関する質疑応答(要約)
最後に、筆者からの質問と、藤原課長からの回答を、抜粋・要約してご報告します。

[Q]
自転車利用者をバスに誘導するという話があったが、現状の路線バスは違法駐車に阻まれて不便でアテにならない。たとえば川崎区などの幹線バス路線はBRT・LRT化するなど、バス利用をもっと便利で快適にしないとバス利用者は増えないだろう。
一方で自転車を減らす、駐輪場を値上げするなどの話もあるようだが、自転車を不便にしてバスへ誘導することはすべきでないし、出来ない。交通手段には様々な選択肢があり、自由に選べるもの。現状で自転車を不便にすれば、マイカー利用を増やすことにつながる。
[A]
不便にさせていくことは考えていない。各々をより便利にしていく。基本的にはそういう考え方。

[Q]
代表交通手段分担率の話があったが、川崎市は徒歩・自転車・公共交通を合わせて8割。世界に誇れる数字だ。これをもっと伸ばす施策を打つべきだと、昨年10月の新総合計画に関するタウンミーティングで市長に質問したら、総合交通政策に取り組むからという回答だった。
ところが、税金の使い道はどうか。自転車が走る場所や公共交通への投資は少なく、自動車が走る車道にかなりの税金を使っている。これを改めるべきでは。
[A]
この総合交通計画で金のかけ方まで変えることはできないが、川崎は公共交通を伸ばしていく方向は共通認識として持っている。そこを明確にしていく。

[Q]
様々な資料を見せてもらい、川崎市内でも地域毎に大きく違いがあることが分かった。こうした違いがあるのに一つの計画では難しいだろう。今回の総合交通計画が出来た後でいいので、区毎や、もっと小さな地域毎に、交通政策について検討する場を設けたら良いのでは。
[A]
地域毎については、地域の特性に応じて施策を考えていく必要があると思うが、今のところ区毎などは考えていない。

[Q]
検討委員会で「鉄道」「道路」「端末交通」の3つの部会に分けて検討を進めていると聞いた。その中で自転車は端末交通、つまり自宅から駅までという位置づけになっているが、道路には入っていないようだ。
しかし、最近は自転車通勤が増えるなど、目的地まで自転車で行く利用が増えている。こうした利用が増えれば、駅前駐輪場不足の緩和にも役に立つ。道路の方にも、自転車の走る場所について位置づけるべきでは。
[A]
自転車の通勤利用が増えている、そういう面もあると思うが、今後の伸びがどうなるか分からない。またネットワークとして考えていかないといけないので、長期的な戦略を持っていかないといけない。市境を超える広域的な利用は今後どうなるのか見極める必要がある。


末筆になりましたが、このような議論をするとても良い場を設けてくださった世話人の土方さんをはじめ、スタッフの皆さんにはこの場を借りて御礼申し上げます。
なお、今回で2回目の自転車まちづくり講座ですが、次回7月2日の講座を最後に、しばらくお休みして防災などのテーマに取り組まれるとの事です。関心のある方はぜひご参加いただければと思いますし、自転車講座に関心のある方はまたの機会を楽しみにしてください。

また、「川崎市総合都市交通計画」に関する意見交換については、川崎の交通とまちづくりを考える会(K-cube)さんが主催して、意見交換会を9月頃に計画中とのことです。市の政策立案の現場に居られる担当の方と直接意見交換する機会は限られると思いますが、私たち市民団体もそうした場を作ってゆきたいと思っていますので、川崎市の交通をもっと良くしたいと思う方は、そうした機会を見つけて、ぜひご参加ください。