「eシフト」への参加について ~エネルギー政策は省エネ+自然エネで!

14日付けのお知らせに掲載の通り、当会は「eシフト」(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)に参加させていただくことにしました。交通の会がなぜエネルギー?これは温暖化対策などでも言われましたが、交通と同様の問題を抱え、密接な関係にあると考えています。

■破綻したエネルギー政策

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極端な節電、一方でクルマは野放し…

3月11日の原子力発電所の大事故とその後の「計画停電」は、震災・津波被害の救援・復旧の足枷になるとともに、従来のエネルギー政策を破綻させました。電力会社は法律による地域独占と引き換えに約束していた安全確保や安定供給の責を自ら放棄せざるを得ない状況に陥りました。地球温暖化対策で求められていた「中期目標」は2020年までに25%削減でしたが、それが突然目の前に突きつけられ、まさに「ハード・ランディング」する格好になってしまいました。

※法律や政策には目的があり、その目的のために個別の施策や規制が設けられています。ここで言えば電気事業法原子力基本法エネルギー基本計画などですが、「安定供給の確保」や「環境への適合」などのために進められていたはずの原子力利用の推進が、目的と逆の結果を生んでしまいました。

■交通政策とエネルギー政策の切っても切れない関係
このエネルギー問題、私たちが取り組む交通分野も無関係ではいられません。例えば、3月14日より実施された「計画停電」は旅客・貨物の交通に甚大な影響をもたらしましたが、この影響は今も続いており、日中は列車が減らされて混雑する上に、暑くても冷房が切られている車内で汗をかきながら乗っているような場面もあります。一方で「マイカー」利用が全く制限されていないことから、このままでは鉄道から自動車への逆モーダルシフトが起きるのではと心配されています。自動車は膨大な熱を捨てながら走っていますので、ヒートアイランド現象を助長し、節電するハズが逆に冷房需要を押し上げてしまうかもしれません。

つまり、交通政策で失敗するとエネルギー政策にも跳ね返るし、逆も然り。机上で考える時は全く別々でも、実社会に出れば相互に関連し合うのです。

■供給側・需要側の両面から取り組みが進む欧州
では、今後のエネルギー政策がどうなるのか、どうすべきなのか。
東京電力の原発事故から真っ先に学び取ったのは欧州でした。日本の原発大事故を見たドイツ、スイス、イタリアなどの市民が立ち上がり、政治はその声を受けて相次いでエネルギー政策の転換を決めたと伝えられていますが、その替わりとして今後は自然エネルギーをさらに大きく伸ばす計画を立てているようです。この流れは左記の国に限った話ではなく、日本でも合理的かつ現実的な選択肢でしょう。
一方で、今すぐ使える自然エネルギーは、石油(大昔の自然エネルギーが長い年月をかけて濃縮されたもの)に比べれば当然に密度が低く、使い勝手が良くないという課題もあります。と言っても石油ピークが指摘され、地球温暖化問題もある中で、化石燃料に依存し続けることはできません。まちづくり百年の計と言われる中で、100年後も今のように安価な化石燃料を大量に安全に使い続けられる確証が無いのであれば、依存すべきではありません。

すると、限られたエネルギーをかしこく使いながら良質なサービスを提供する必要があります。私たちが取り組む地域交通分野で言えば、莫大なエネルギー消費が前提になる「マイカー」利用は減らしながら、エネルギー効率が高い公共交通や自転車の利用が優先されるまちづくりが不可欠になるでしょう。
これは、欧州などで進められている地球温暖化対策がほぼそのまま当てはまります。唯一適用できないものは、原子力発電のような高密度エネルギーの利用を前提にした電気自動車のみ。それ以外の政策、たとえば公共交通や自転車の利用が便利で快適になるよう車道配分を変える、LRTやBRTなどで路面公共交通を高度化する、ゾーン20・30などで歩く人を安心・安全・快適にする、人が集まる施設を駅前に集中させるコンパクトシティ化などがありますが、こうした交通・まちづくり政策の転換は既に欧米などの諸都市で取り組まれ、成果が出ています。
(参考)
ブラジル・サンパウロで開催されたC40「大都市気候変動サミット」での事例報告を伝える記事(英語)
C40公式ホームページの先進事例紹介(英語)

■日本の欠点は技術ではなく制度・政策
欧米には出来て、日本には出来ないのでしょうか?そんな事はありません。むしろ日本の多くの地方都市ではかつて公共交通が便利に発達していましたし、首都圏や関西圏のように今も公共交通が便利な地域もあります。平成20年の調査で現に川崎市や東京23区では交通手段分担率の8割を徒歩・自転車・公共交通が担っています。さらに、ある試算によれば、東京では交通政策の工夫などにより、利便性を損なわない範囲で交通部門のCO2を半減させることが出来ると言われています。

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2011.06.15 「再生可能エネルギー促進法」要望書を菅首相に託す

つまり、要素技術やインフラ、土地利用などに関しては、日本の多くの都市は欧米以上の可能性を持っていると考えています。しかし主に政策・制度的な課題から、立ち遅れているのが実情です。

あれ、どこかで聞いたような?日付変わって昨日・15日に国会議員会館で開催された『「エネシフ・ナウ!」通そう今国会で「再生可能エネルギー促進法」!の席で菅首相が指摘されていた、日本は制度的な問題で自然エネルギーが30年遅れてしまったと言う事と、まさに同じ事が交通・まちづくり分野でも起きています。
経団連などは今もなお原発推進を求め、再生可能エネルギーの積極利用に強硬に反対しているようですが、負の連鎖を断つためには私たち市民の声を高め、利益団体の言いなりになる政治は廃し、今こそ市民目線で制度・政策を作り直す必要があるでしょう。
※『「エネシフ・ナウ!」通そう今国会で「再生可能エネルギー促進法」!』の話は別の機会にしたいと思います。

■新しいエネルギー政策は供給側だけでなく需要側の視点も必要
従来のエネルギー政策は、原発のような高密度エネルギー利用を前提とし、それが余る夜間の対策として夜間電力料金を格安に設定し、ヒートポンプを普及させ、さらに電気自動車普及策にもつながっていました。
こうした中央集権・大量生産・大量消費という20世紀型の考え方は、一度天災などで寸断されると途端に大混乱を引き起こす、持続不可能なものであることが判明しました。

今後のエネルギー政策は、供給側では自然エネルギーのような分散型エネルギー源を上手に使っていくことが求められますし、分散させることでリスク緩和にもつながりそうですが、こうしたエネルギー源はどうしても密度が高くない分、使う側も柔軟になる必要がありそうです。
こうしたエネルギー政策は当会の主力分野ではないものの、密接不可分な分野ですし、今後は需要側の政策も一緒に考えていく必要があると思っています。すると、当会としてはエネルギー政策が転換した後の需要側の工夫(交通・まちづくり分野)を中心に微力ながらも役に立てる場面もあるのではと思い、MAKE the RULE キャンペーンでのご縁もあって「eシフト」(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)に参画させていただくこととなりました。

当会では今後とも、人と環境にやさしい交通手段がより快適・便利になることで、少ないエネルギーを効果的に使い、いつまでも安心して暮らせるまちづくりを目指して取り組んでゆきます。

和光大学に行ってまいりました。

去る5/3に、和光大学 経済経営学部 小林猛久先生の「産学連携実践論」初回講義に伺って、自転車タクシー並びに市民活動について学生さんに説明してきました。
まだ審査結果が出ていませんが、今年度SLTcで取り組み予定の市民活動助成金による自転車タクシー事業実施に際し、学生さんの力を借りて取り組みたいということが目的です。
井坂さんからSLTcの活動全般から交通と市民活動、自転車タクシー概要などの説明があり、私からは自転車タクシー事業における学生さんに協力を頂きたい点について説明を行いました。
あまり質問はありませんでしたが、小林先生の講義の趣旨は我々のような市民団体との協同事業を経て、キャンパスを離れ、実社会での様々な経験を得ることにあるそうですので、何とか本事業の申請が認められ、実際に協同事業に進めばと願う次第です。

ところで、井坂さんも私も市民活動に入ったきっかけなどについてお話させていただきましたが、学生さんを前に、自分の学生時代を少し思い起こしてみました。
大学入学当時、専攻する中国史の知識を少しでも得たいと「中国史同好会」というサークルを見学に行きましたが、ちょうど新入生勧誘企画として、中国の少数民族研究家で大学では中国語講師をしていた谷野先生のお話を聞いたのがきっかけでその場で入会を決定しました。
このサークル、当時は私ともう一人入ってもようやく7名という不人気で、もし谷野先生の話がなければ私も入会していなかったでしょう。それでも何となく続けて、2年生の時に新入生勧誘に失敗し、人数が少なかったので3年生で幹事長になった際、春休みの中国短期留学経験を活かして、中国旅行を目玉企画にしたところ、人数が増えてサークル存続と活性化に成功しました。
これは今でも続く活動となっているようです。

現在は全く交流はないですが、この谷野先生に出会ったことで始めたサークル活動。そして、サークルを自分で運営した経験とそれが自分でも好きだったということに気づいたことが、現在の市民活動に取り組む原点だったと今では思います。また、サークルに入会したことが中国留学につながり、就職につながり、留学当時の仲間との出合いや、恥ずかしながら妻との出合いにつながり、中国に連れて行った後輩が中国関係の研究や就職のきっかけとなったりしました。また、私自身の交通関係の市民活動参加につながり、そこで出会った様々な方の影響を受けて、自分でも市民活動をはじめ、それが井坂さんを始め、様々な人との出会いにつながっていきました。
そう考えていくと、谷野先生の話を聞いて入会したサークルが最初の一石となり、20余年を経て、現在に至っていることを帰りの電車で思っていました。

今回、和光大学との協同事業がかなうなら、非常におこがましいことですが、かつて私が出会った谷野先生の役割を、今度は我々が学生さん達に対して担うことができればと思っています。

取り急ぎ以上ご報告というか、退屈な思い出話をしてしまいました。悪しからず。

鉄道の安全対策と地域への貢献

前回からのつづき)

■「死傷者ゼロ」に甘んじることなく対策を積み重ねる

【東日本大震災】東北新幹線 福島~仙台間(3月13日撮影)

【東日本大震災】東北新幹線 福島~仙台間(3月13日撮影) © 2011 Hitomi


3月11日の東日本大震災および4月7日の大規模余震によるJR東日本の被害状況は、4月17日の発表にまとめてられていますが、同社在来線では津波被害を受けた7線区を除いて約4400箇所、さらに4月7日の余震で850箇所。新幹線は那須塩原~盛岡間の378kmに約960箇所、4月7日の余震で500箇所とのこと。件数だけでもおびただしいものがありますが、駅舎設備や橋脚損傷などの大きな被害もあり、これだけの被害が1ヶ月半で復旧したことに驚きすら感じます。

[PDF]東北新幹線の地上設備の主な被害と復旧状況(2011年4月17日現在)
[PDF]在来線の地上設備の主な被害と復旧状況(2011年4月17日現在)

このような甚大な被害を受けたにもかかわらず、阪神大震災(山陽新幹線)や新潟県中越地震(上越新幹線)よりも早い復旧を実現したことが、29日の新幹線復旧に合わせて報じられていました。

4/28 東北新幹線:震災復旧も超特急、29日に運行全面再開-生きたノウハウ (Bloomberg)
4/29 東北新幹線、49日で復旧 「阪神より短期」支えた2つの進歩(日本経済新聞)

マグニチュード9以上という世界でも稀な巨大地震による被災は甚大かつ広範囲に及ぶものでしたが、これほど早く復旧できた背景には、これまでの被災経験から学び備える態勢があり、その備えがJR東日本および協力各社の懸命で手際の良い復旧作業を実現したのでしょう。

7年前の新潟県中越地震ではM6.8の直下型地震により上越新幹線直下で震度7を記録、幸い死傷者は出ませんでしたが、列車が大きく脱線しました。この時に死傷者ゼロで良かったと終わらせるのではなく、むしろ状況次第では惨事になっていたことが深刻に受け止められました。この経験を踏まえて、鉄道各社と関係機関が連携して、高架橋やトンネルなどの耐震補強、早期地震検知システムの充実(地震計の増設や動作時間の短縮など)、そして脱線・逸脱防止器具を開発し装着していました。

新幹線脱線防止対策の進捗状況について (MS-Word 35KB)地震時における新幹線の安全対策 (PDF 199KB)第10回新幹線脱線対策協議会の概要について、国土交通省、2009年 3月18日
[PDF] ラーメン高架橋・橋脚の耐震補強対策の進捗状況について(JR東日本、2008年 5月13日)

これらの対策は今回活かされたようで、営業車両の脱線ゼロ(試運転中の車両1両が脱輪)。耐震補強が行われた高架橋では大きな損傷を免れたようです。一方で架線柱の被害が広範囲に及ぶ(冒頭写真)などの課題もあったようです。

3/22 東北新幹線「安全神話」は健在 想定超えた地震でも脱線防ぐ(産経新聞)
4/06 緊急速報メール見習え?脱線を免れた新幹線システムとは(ZAKZAK)
2011年東北地方太平洋沖地震 構造物被害調査(京都大学防災研究所 高橋良和) (PDF 5.2MB)

■現場を無視した理論過信の「安全神話」は崩壊する
3月18日に配信された英文記事では、「控えめに言っても壊滅な被害をもたらし、ここ十年で最悪の原子力危機に火をつけたM9.0の地震ですら倒せなかったものが2つある。沖合いにがっしりと建つ風力発電機と、日本の高速鉄道インフラだ。」と絶賛されていました。細かく見ると事実誤認と思われる記述もある記事でしたが、注目したい点に、発災時に新幹線に乗り合わせた外国人旅行者の手記が紹介されています。

9.0 Earthquake Not Enough to Derail Japan’s High Speed Trains (TreeHugger)
 ―M9.0の地震でさえも、日本の高速鉄道を脱線させられなかった
Nick Schneider: Notes on an earthquake ―地震に直面した記録

東北新幹線沿いでは震度6弱~7の激しい揺れが起きていたと思われますが、この手記を見ると、高速走行中の新幹線車両は静かに停車したこと、その後余震が続く間は車内で待機し、夜には迎えのバスが来て旅館に案内された様子までが報告されています。

一方、今なお世界を震撼させている東京電力福島第一原子力発電所の大事故については、エネルギー政策そのものに加え、原子力利用にまつわる「安全神話」が問題視されています。平成12年版『原子力安全白書』にはまさに「安全神話」についての記述がありますが、ここでは「設計への過剰な信頼」「事故が発生しなかった実績に対する過信」「過去の事故経験の風化」「原子力施設立地促進のためのPA(広報)活動のわかりやすさの追求」、そして「絶対的安全への願望」が「安全神話」を生み出したと自省しています。(しかし、この反省は活かされず取り返しのつかない大事故を繰り返し、今なお「安全への願望」や「広報活動」を繰り返しているようですが。)

『日経サイエンス』2011年6月号には「科学者の思考停止が惨事を生んだ」という記事が載っており、社会が科学を過信したことや、科学が政策推進の道具に利用されたときに「科学技術が誤る」と指摘されていました。
同じ失敗を繰り返さないためには、学者の机上の空論を過信するのではなく、現場の経験に基づいた謙虚な反省と地に足をつけた着実な対策が必要と実感されます。

■地域とともに津波被害からの「復活」を目指す各社

【東日本大震災】JR石巻線女川駅(3月30日撮影)

JR石巻線女川駅(3月30日撮影) © 2011 ChiefHira

【東日本大震災】JR大船渡線 大船渡駅(4月4日撮影)

JR大船渡線 大船渡駅(4月4日撮影) © 2011 Mitsukuni Sato

【東日本大震災】JR常磐線の高架橋倒壊(4月13日撮影)

JR常磐線(おそらく大野~双葉間)の高架橋倒壊(4月13日撮影)

ところで、津波被害を受けた地域の被害は想像を絶するほど深刻で、町全体が押し流されてしまうほどのものでした。駅舎や線路の流失、橋梁倒壊など、ほぼ全壊のような線区が広範囲に渡っているようです。また原発事故の影響で立ち入りすら出来ない地域もあり、復旧の目処すら立っていません。

[PDF]津波を受けた7線区の主な被害と点検状況(2011年4月4日現在)

こうした状況ではありますが、JR東日本の清野智社長が4月5日の記者会見にて、津波の深刻な被害を受けた7線区(八戸線、山田線、大船渡線、気仙沼線、石巻線、仙石線、常磐線)を全て復活させる方針を示しています。これらの各線は軌道も駅も甚大な被害を受けており、時間はかかるでしょうが、全線「復活」の方針が示されたことは、東北地方の復旧・復興に向けた大きな力になることでしょう。

4/06 東日本大震災:被害7線区「復活させる」--JR東社長(毎日新聞)

また、奇しくも3月17日には運輸政策研究機構主催の「チリ地震津波の経験を踏まえた公共交通機関における津波対策に関する調査」発表(震災前より予定されていたもの)が公開で行われました(概要PDF)。こうした研究が日々積み重ねられ、そして全国の交通関係者で共有されています。今後の対策強化に期待したいところです。

4/28 大津波対策 鉄道見直し(読売新聞)

日本の鉄道は今回の甚大な震災被害からも復活することはもちろん、今回の被害状況から教訓を得て、さらに安全なものになることでしょう。すでに津波警報発令時の避難体制の在り方などについて見直しが始まっているようです。各社の取り組みに期待するとともに、私たちもしっかり見守り、応援したいところです。

■鉄道・バスを使えば、いざという時も安心、地域にも貢献
公共交通は地域の毎日の生活に欠かせないものですが、同時に、土地勘のない場所へ出かけるときにも心強い味方です。マイカーがあればどこへでも行ける、と思う人もいるかもしれませんが、マイカーの利用は全て自己責任。あらゆるリスクに備えねばなりません。
今回の震災では津波被害の甚大さが際立ちましたが、大勢が同じ行動を取ろうとする時、自家用車は無力ですし、歩行者や緊急車両の通行を妨げるなど、むしろ他人を危険に晒すものです。

4/01 避難渋滞、津波被害を拡大 促しても車降りる人少数(朝日新聞)
3/22 陸前高田の小3、津波の夜を独りで越え 母と翌日再会(中日新聞)
地域で語り継がれる津波経験 (大楽毛地区編) 平成21年3月(国土技術政策総合研究所) (PDF 2.14MB)

一方、鉄道では大抵の場合は乗務員がいます。今回も大津波警報の発令が指令室から伝えられ、避難誘導がされたようです。乗り合わせた地元の人が近くの高台を案内してくれた場合もあったようですが、多くの人が居合わせていることも心強いものです。
避難後は、携帯電話の基地局の被災などにより連絡が途絶えた所もあったようですが、災害時は安否確認から当面の安全確保まで鉄道事業者が見てくれます。また、運行管理もされているので、非常時にも場所の確認が比較的容易です。

これに比べてマイカーでの移動は孤立してしまうので、被災しても誰からも見つけてもらえない場合があるなど、土地勘のない所ではとても危険。特に余震が続く現状では地滑りなども起こりやすく大変危険です。しかも渋滞の原因になり、緊急車両や物資輸送を妨げ、復旧ボランティアが復旧を妨げる格好になりかねません。本会が 4月25日より配布している「東北支援ボランティア交通情報」でもそうした注意喚起も行いました。

■大切な公共交通に乗って残すことが、地域の復興につながる
地域にとっても、また地域を訪れる人にとっても大切な公共交通は、ただでさえ経営が苦しく苦境に立たされているところに、今回の震災・津波被害が重なりました。『週刊東洋経済』4月16日号「徹底検証 鉄道被災」でも「不採算路線に被災が集中」と載っていましたが、前回も書いたように、被災により廃止も心配されていたところに、JR東日本は津波被害を受けた7線区を「復活させる」と明言していますし、三陸鉄道やひたちなか海浜鉄道など他社も復旧を目指しています。しかしJR東日本といえども被災復旧負担に加えて史上空前の減収に見舞われており、元々経営体力に乏しい事業者では復旧費用負担の目処も立っていない状況です。

私たちの生活と地域の復興に欠かせない公共交通を支えていくために大切なことは、国や自治体にお任せではなく、第一に地域住民、そして地域を訪れる人が利用することです。安易なマイカー利用を見直し、大切な公共交通に乗って残してください。公共交通事業者はきっと期待に答えてくれることと思います。

震災復興で実感される鉄道の役割


29日、東北新幹線が全線で復旧しました。この様子は新聞やテレビなど各社が大きく報じ、沿線から見守る住民の皆さんの様子なども紹介されていましたが、鉄道の復旧は、震災被害の爪痕が今なお深く残る東北地方を勇気づける朗報となったようです。

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4月29日現在の東北地方の鉄道復旧状況まとめ(当会集計)


また、やはり大きな被害を受けた在来線も迅速に復旧しており、東北本線は新幹線よりも早く22日に全線で復旧しました(IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道は3月18日に全線復旧しています)。これにより旅客はもちろん、貨物輸送も再開され、これまで日本海側(羽越・奥羽線)を経由して盛岡まで運んでいた物資の輸送時間が短縮するとともに、運休していた貨物列車のほとんどが復旧し、首都圏~北海道間などの物流機能が概ね回復しました。他の鉄道在来線も、津波被害を受けた7線区と震災以前に被災していた岩泉線を除くJR全線が、28日までに復旧しました。東北地方の復興にとって大きな力になっていることでしょう。

【右図】29日現在の東北地方の鉄道復旧状況まとめ(当会集計)「東北地方ボランティア交通情報」4月29日版より

29日には、仙台市内で最後まで不通になっていた地下鉄南北線の台原~泉中央駅間も復旧しています。こうした鉄道復旧は、日常を取り戻すことに大きな一歩になったのではないでしょうか。

4/30 大動脈 待望の復旧 一番列車エールで出迎え(河北新報)
4/30 49日ぶり全線再開 駅構内に人波/東北新幹線(陸奥新報)
北斗星(4月30日付)(秋田魁新報)
4/30 仙台地下鉄が全通 台原―泉中央の工事完了(河北新報)
4/29 仙台市営地下鉄が全線再開 工事見直しで予定前倒し(日本経済新聞)

もちろん、鉄道復旧までの1ヶ月半ほどの間には、路線バス各社が定期高速バス路線の迅速な復旧に加え、ただでさえ燃油不足などで経営の苦しい所に臨時バスの運行・増発を行い、被災地の交通を支えたことも特筆すべきです。国交省のまとめによると、震災後6週間(3/12~4/22)で東北地方から首都圏への31路線で20万人の足を担ったとのこと。(首都圏と東北地方を結ぶ高速バスの輸送実績(国土交通省))地域内路線でも、津波等で被災しながらいち早く運行を再開させ、中には運賃を安く抑えるなどして、地域の足を支えています。

一方で、この震災・津波被害により鉄道各社は大変な負担を背負いながら自己負担で復旧を行っているのが実情です。道路の災害復旧は(高速道路会社を含め)ほぼ100%が公費負担で復旧されますが、鉄道は補助率が1/2。半分は鉄道会社が負担せねばなりません。比較的体力のあるJR東日本は他社からの応援も受けつつも迅速な復旧を実現しましたが、比較的経営体力の乏しい地方鉄道にとって復旧負担は大変な重荷です。
2005年の台風による被災を受けて再建を断念した宮崎県の高千穂鉄道や、2009年の台風被害で今なお復旧していない三重県のJR東海・名松線のような事例もあります。

今回の東北地方では、JR東日本全路線の復活意向を明言していますし、阿武隈急行も現在復旧が進められています。一方、半分以上の線区で甚大な津波被害を受けた三陸鉄道は被災5日後に運賃無料(現在は割引運賃)の「復興支援列車」を走らせるなど復旧に向けた意欲はあるものの、復旧費用の捻出目処が立たない面があるのも事実です。茨城県のひたちなか海浜鉄道鹿島臨海鉄道、貨物専業の福島仙台八戸の各臨海鉄道も復旧目処が立っていません。しかも各社とも旅客減少などにより運賃収入が激減しています。もちろん、経営体力があるJR東日本にしても、莫大な損害を受けていることに変わりはありません。昨今は復旧支援ボランティア活動を希望される方が多いとのことで心強いですが、東北地方へお出かけの際に鉄道や高速バスを利用することも、被災地の支援になると思います。

4/21 大奮闘の三陸鉄道、被災者の足に――震災5日後に一部運転再開、赤字なのに運賃無料(東洋経済)
4/05 三陸鉄道「国の支援なければ、もはや何も…」(読売新聞)
4/06 JR東、震災で3月…鉄道収入減 過去最大(読売新聞)
4/18 東日本大震災:半月で過去最悪の減収 JR東(毎日新聞)

市民団体の中からも、地域の生活に欠かせない鉄道や路線バスの復活を支援するための具体的な動きが出てきており、今後随時ご案内できればと思いますが、一方で政府はせっかく懸命な努力により復活した鉄道に水を注すような「高速道路無料化」を実施しようとしていると報じられていました。野党もこれを牽制するどころか賛同しているような有り様のようです。自動車は少ない需要には有効ですが、幹線輸送には不向きなものです。「復興の起爆剤」どころか、生活に必要な交通すら麻痺させてしまうでしょう。日本政治の相変わらずの交通無策ぶりには、怒りを通り越して失望させられます。

4/29 首相、東北道無料化に前向き 補正審議、休日返上(朝日新聞)
4/29 首相、東北の高速無料化「復興へ有力な選択肢」(日本経済新聞)

このように、鉄道による幹線輸送が私たちの生活や経済活動に欠かせない大切なものである事はもちろんですが、もうひとつ、鉄道のような軌道系交通は「都市の装置」であり「心の景色」になるという指摘があります。

宇都宮浄人氏は著書『路面電車ルネッサンス』(新潮新書)にて、軌道系交通は「都市の装置」だと述べられています。

また、2009年の「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」にて『定刻発車』(交通新聞社)の著書・三戸祐子氏が、「鉄道は確かさを提供する。世間では確かさと変化のそれぞれ求められており、変化が無いとつまらないが、変化の激しい中では確かなものが拠り所になる。鉄道は乗り物というより環境に近い。同じ場所を同じ軌道で走る。人々の心の景色になり得る。」(要約)と述べておられました。

鉄道が走っている景色が復活することで、その地域の皆さんが心理的に日常を取り戻すことができる。そんな役割も持っているのかもしれません。

今回の震災では、原発事故も発生し、私たちにエネルギー政策の見直しを突きつけられています。3月14日には東京電力の「計画停電」が鉄道をも対象にしたことで、地震被災のほとんど無かった首都圏の鉄道をも大きく乱し、旅客交通はもとより鉄道貨物輸送まで止めてしまい、大混乱を招きました。都市では鉄道が無くなると日常生活が送れなくなる。そんな当たり前のことを改めて実感させられました。

鉄道の走る情景と、その運行の確かさは、水や空気のように失って初めて気づく大切なもののように感じます。今回の震災とエネルギー政策の破綻は私たちにいろいろ考えさせられましたが、地域の拠り所としての鉄道の価値が再確認されたことも、重要な反省点のひとつだったと思います。

次回へつづく)

この夏は電車を増やして「節電」しよう

昨日・今日と、ぐっと暑くなってきました。

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銀座線電車。窓が開けられている。(27日撮影)


電車では節電のため冷房を使わず、窓を開けていましたが、だからと言って不快なことは無く、まだ今の時季は、朝の混雑時でもなければ、窓を開ければ充分涼しいものです。むしろ、以前は余分な冷房での冷えに備えて上着を持って出かけていたところですが、今は事務所や店なども空調を控えめにしているので、荷物が軽くなりました。

写真の銀座線01系はちょうど地下鉄に冷房が入り始めた頃に投入された電車なので窓が開きます。昔は中間期には冷暖房が使えない車両が多かったのですが、最近は空調使用が当たり前になり、むしろ空調は全期間通して使えるようにして、窓が開かない構造の車両も増えてきました。可動部が減ることでおそらくコスト削減には寄与しているのだと思いますが、一方で通年空調が必要になります。乗客が電車の窓を開けて車内温度を調整することは、昔は当たり前でしたが、今になって思うと、自然と共生する智恵と言えるのかもしれません。

さらに、銀座線に乗っていると、セクション間で第三軌条に集電靴が入る時のカチャカチャという音が聞こえます。この昔は当たり前のように聞こえていた音が、今ではとても懐かしく思えます。そのまた昔は駅に入る直前で一旦車内灯が消えていた頃もあるのですが、今ではもう、その時代のことを知らない人も多いでしょうか。

いずれもこの数十年の間に実施された改良で、すっかり変わった印象があります。でも、仮に10年前に戻ったとしても、実はあまり困ることは無さそうです。身体の不自由な方向けのエレベータは今でも使えるようになっています。今止まっている照明やエスカレータは、実は無くてもあまり困らない物かもしれません。また、銀座線や丸ノ内線など比較的浅い所を通っている路線はともかく、最近開設される路線は深い所に駅があるので、おのずとエスカレータや照明が多くなります。照明やエスカレータが多い方が便利というものではなく、今後はむしろ欧州のように地上にLRTを通す方が、便利と節電を両立できると言えそうです。

ところで、鉄道は3月14日からの「計画停電」の対象とされ、大混乱したことは記憶に新しい所ですが、いくら緊急対応と言ってもお粗末だった政府・東京電力の対応を受けて直ぐに国交省が仲裁に入り、数日ほどで、鉄道各社による電力使用量の自主的な削減と引き替えに電力の安定供給が再開されるようになりました。こうした経緯を受けて、鉄道各社では今でも2割程度の減便や照明・エスカレータ・券売機等を停止するなどの節電対策が実施されています。

3月14日には多くの教訓を得ました。電車は少なからず電気を使いますが、電車を止めてしまうと多くの人が日々の生活を送れなくなってしまいます。一方で、前述のエスカレータや照明のように止めてもあまり困らないものもあります。優先順位の付け方が重要です。

また、電車に乗れなかった人が自転車に乗り換えてくれるのならまだいいのですが、困ったことに政府・東電は鉄道各社に節電を求めながら、自動車の使用は野放しなのです。

この夏、もし電車が減ったぶん自動車に乗り換える人が増えてしまったら、都心は熱射地獄と化すでしょう。ただでさえヒートアイランド現象の深刻化が問題になっていますが、ガソリン1Lは約8400kcalもの熱量を持っており(経産省エネルギー源別発熱量表(PDF)より)、これは常温の水100Lを沸騰させるほどの膨大な熱量です。このほとんどが大気中に排出されているので、エアコンにさらに負担をかけ、電車を減らしたことで電気使用量をむしろ増やしかねません

このように、交通は鉄道だけ、自動車だけの対策ではうまく機能せず、つなげて考えることが必要な分野です。
短絡的に「電車を減らせば節電になる」と思う人がいるかもしれませんが、実際はむしろ逆効果になりかねません。そんな片手落ちの「名ばかり節電」ではなく、全体で省エネになるかしこい節電が出来るよう、今から準備しておく必要がありそうです。